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1970年物語/第八話 by/門田一郎 「福大発12番線」 私と田原以外のメンバーは下宿や寮住まいで月に2〜3万円前後の仕送りがあった。合宿所の費用は家賃、光熱費、その他を見積もって一月4万2千円。一人月7千円の負担である。田原を除く6人で合宿をはじめた。私の場合「自立」したのだから親父に頼るわけにはいかない。学費の支払いもあるので合宿に入ったその日からアルバイトをはじめた。 福岡の街を我が物顔で走る「西鉄バス」に揺られて終点の博多駅まで、春休みの間、毎朝アルバイトに通った。朝の混雑を入れるとゆうに1時間はかかる。合宿所のみんなが寝静まっている朝7時には家を出る。 小松が丘は始発点の福大前から二つ目で、まだ空席が目立つ車内である。終点まで乗って行くのだからと最後部の席を目指す。シートに腰を下ろし窓にもたれかかると終点までの小一時間、私は夢のつづきに入っていく… 友泉第一から車内はほぼ満員となる。うつらうつらしている私の目の中に淡いピンクのスーツが映った。視線は自然と上に行く。新卒で入社しましたと言わんばかりの初々しい女の子が横顔を見せて私の目の前に立っていた。 眠気もどこかに吹き飛んで私はその女の子の横顔を穴あくほど見つめていた。女の子が振り向いた時に私と目が合った。彼女は微笑みを浮かべて恥ずかしそうに会釈をした。…ドキッ、それって俺に? 一日中、目にピンクのスーツが焼きついて頭の中には言葉が舞っていた。合宿所に帰り着くとそのまま部屋に飛び込んでノートの上に言葉を並べはじめた。10分程度で歌詞が出来上がった。 「久保、詞が出来たやね。」と出来上がったばかりの歌詞を持って久保の部屋に行く。 「おう、ちょうど良かったやね。俺も今、曲が出来たとこたい。」この男、詞を見ないで曲を作る。勝手に作った曲に私が書いた詞を当てはめていく…私が描いた歌のイメージは全くと言っていいほど拭い去られてしまう。 出来上がったばかりの歌詞を二人でああだ、こうだと曲に当てはめていく。歌詞の足りないところを書き加え、長いところを書き直していく。それでも詞を書き始めて30分で曲は完成した。あとは演奏をどうするか…。 「よし、出来た。おーい、みんな集まれ。新曲が出来た。練習するぞ。」 こんな時、合宿所は便利である。田原を除いては… 今日もあなたに会いました 満員バスの中で ピンクのスーツを着ていましたね とってもとっても似合います 友泉第一、六本松 バスは走ります コックリ居眠りしていましたね ボクもまだま眠いです 今日もあなたに会いました 満員バスの中で 一番後ろに座っていたね となりのとなりがボクでした 天神、中州、博多駅 バスは走ります 明日もあなたに会えるでしょうか 福大発12番 あっという間に出来上がったこの曲。妙安寺ファミリーバンドを代表する曲になった。その後クラブの愛唱歌として後輩達によって長く唄い続けられた。 |
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